生き方を教わったフィギュアスケート
フィギュアスケートへの思い入れは、次の言葉にもうかがえる。
「だからフィギュアスケートには、ほんとうに生き方を教わっている感じがしますね。小さい頃のお友達作りから、日本でいじめに会っていたときにリンクに行ったり、そうした体験も大きかったですし、自分の力で上達して、でも自分の力ではここまでしかできないんだっていう挫折を人間として味わうのもフィギュアでした」
なによりも通訳としてかかわって、気づいたこと、知ったことがある。
「フィギュアスケートを見て楽しんでいる中で、仕事でかかわるようになって、連盟の方々が皆さん、スケートが好きで、自分のプライベートを犠牲にして、力を尽くしている姿も見てきました。
そして、選手のストイックさには、毎回、大会に行くたびに身が引き締まる思いがします。だから私にはこれが必要なんだなと思っています。実は繁忙期で忙しい時期なんですけれど、必ずNHK杯だけは行くようにしています。
ストイックにトレーニングしてきて、最後に選手たちがリンクに出し切ったものだけが残ります。私たちも出し切ったものだけが問われますが、いかに前もっての準備が大切か、そこは共通しているんです。『平井さんに頼んでよかったよ』と言われたらGOE(出来栄え点)がアップしているようなものです。いい通訳だったと言ってもらえるためには何が必要なんだろうと思うと、選手たちの姿勢が浮かんできます。原点回帰の場だなと思っています」
選手や選手を支える人々の姿も見てきた。自身のスケートとのかかわりもあいまって、フィギュアスケートでの活動にも熱をこめる。
大会の現場での通訳という仕事、国際会議などへの参加。さまざまな活動を通して、選手のために、日本の地位向上のために、力を尽くしている。
平井美樹(ひらいみき) 放送・会議通訳者として国際会議やビジネスの場で活躍。またスポーツでも活躍し2002年サッカー日韓ワールドカップ、2019年ラグビーワールドカップ、2021年に開催された東京オリンピックなどにも携わる。フィギュアスケートでは2007年より通訳として活動している。