文・撮影=松原孝臣
2人のパワーバランス
4月25日、フィギュアスケート・ペアの三浦璃来・木原龍一の「報告会」が開催された。2人が所属する木下グループが実施したものだ。
2人は2022-2023シーズン、「年間グランドスラム」を達成。年間グランドスラムとは、グランプリファイナル、四大陸選手権、世界選手権のすべてで優勝すること。達成するのはすべての種目を通じて日本初であった。しかも2人は、この3大会を含め出場したすべての大会で優勝。圧倒的な存在感を示すとともに、記念すべきシーズンを過ごした。
報告会では、卓球の男子エースとして長年活躍した水谷隼氏をプレゼンターに迎えて行われた。水谷氏による質問コーナーなどをはじめ、2人の特徴や強さがあらためて浮き彫りになる時間ともなった。
大会のときにはない穏やかな表情とともに現れた2人は、フィギュアスケート選手ならではの癖を水谷氏に質問される。
三浦が答える。
「『フィギュアスケーターあるある』だと思うんですけど、小さな段差でもつまづいてしまう」
「璃来ちゃんだけだと思う」と木原がひとこと挟んだあと、やりとりが続いた。
「(ふだん)段差がない氷の上を滑っているので」(三浦)
「必ず前を歩いて『段差があるよ、段差があるよ』と伝えているんですけど、伝えているにもかかわらずつまづいて捻挫しています」(木原)
水谷氏は現役時代、個人戦で戦い、団体戦やダブルスも数多く経験している。東京オリンピックでは伊藤美誠とのミックスダブルスで金メダルを獲得した。
——基本的には僕は伊藤選手の意見に従う側だったんですけど、2人のパワーバランスはどんな感じなんでしょうか。
すると三浦が答える。
「けっこう2人とも譲らないので、コーチの存在が大きいです」
——なるほど、2人とも何か言い合ったら譲らない。
「譲らないです」
木原がそんなことはない、否定すると、「木原選手の方が大人の対応をするんですか」との水谷氏の言葉に、三浦が返す。
「ほんとうに頑固で譲らないです」
3人は笑顔に包まれた。