「134万トン」を強調し反日感情をあおる
それにしても福島での海洋放出は、韓国人の反日感情をくすぐる格好のネタらしい。22日の各局での報道を見ると、今後30年間で「134万トンの汚染水が放出」という言葉が躍る。
私が視聴した聯合ニュースの報道でも、低音の響くおどろおどろしい音楽にのせて「134万トン」が表示された。人類を滅ぼすような大量のトリチウムが放出されると言わんばかりだ。だが、この数字はトリチウムの量を表してはいない。
そもそも韓国の原発ではトリチウムの年間放出量が日本よりも多いうえに、中国などは福島の何十倍の量のトリチウムを放出している。福島から今後放出される30年分のトリチウムの総量は、中国の黄海にある原発から過去8年間ほどで排出されてきたトリチウムの量とも言われている。
しかも、トリチウムの半減期は12年だ。もしも福島の海洋放出で放射能汚染になるというのなら、韓国の西海岸はもうとっくに「放射能漬け」になっているはずだ。だが、実際はそこまでのレベルではない。
あえてはっきりと書くが、韓国メディアにとってはそのようなことはどうでもいいらしい。なんとしても「134万トン」を強調し、国民を驚かせて反日感情を駆り立てたいのだろうかと、顔をしかめてしまう。
日米韓首脳会談後の記者会見のなかで、尹大統領は「計画通りに処理されるかについては日本、韓国を含め国際社会で責任ある点検が必要だ」との見解を示した。韓国政府も点検に関わるという点で、海洋放出に警戒感が極めて強い韓国社会に配慮した発言ととれる。しかも、この件をめぐる世論の風向きを変えられると見込んでいるようでもある。
とはいえ、尹大統領の道のりは楽観視できない。世論調査会社リアルメーターが21日に発表した最新のデータによると、大統領の政策運営に対して、肯定評価が35.6%、否定評価が62.1%であった。政党支持率でみても、野党の共に民主党が49.7%で、与党の国民の力が38.1%である。 現在は捻じれ国会で、来年春に国会議員選挙を控えている。
与党としてはそこで勝利を収めて政権運営を安定化させたいところだが、今のままでは厳しい。しかも、一時は国民の力が優勢だったのが、あっという間に逆転されてしまったのだ。