日本銀行は7月の政策決定会合でこれまでの金融緩和政策を修正した。「サプライズ」と受け止めた市場関係者が多かったようだが、大きな波乱は起きなかった。課題である「異次元緩和」からの脱却に向け、第一歩を踏み出した日本銀行には今後、何が求められるのか。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)
(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)
政策変更、公表文だけ見ると些細な変化だが…
去る7月28日、日本銀行は当面の金融政策運営のあり方を変更した。直前まで変更はないとみる市場関係者が多かったことから、ある意味、驚きだったのだろうが、その決定はスムーズに受け入れたようだ。
それは、変更の仕方が非常に「日本的」であったためか、あるいはそもそも金融市場が望んでいた方向であったからか。おそらく、その両方だったのだろう。
金融政策決定の過程をできるだけ透明なものにするというのは、もう長いこと世界の主要な中央銀行の基本路線になっている。これに対し、短期と長期の両方の金利を中央銀行がコントロールしようとするイールド・カーブ・コントロール(YCC)の出口にあっては、その決定がサプライズとならざるを得ない面もある。長期金利が決まる金融市場は、規模も大きく、参加者も多様であるため、次の政策決定会合での政策変更がある程度広範囲に予測されると、その時点で長期金利が動いてしまうからだ。
この矛盾にどう対応するかも日本銀行の課題だったが、今回は狭い道をうまく通り抜けたと言えそうだ。YCCが完全に解除されたわけではないが、最初の関門を通過したことで、次のステップに向けての展望が開けたことは間違いない。
今回の日本銀行の政策変更は、肝となる公表文の変化だけをみると、とても些細にみえる。
まず、長期金利の変動幅が、これまで「±0.5%程度」であったものが、「±0.5%程度を目途」に変わった。そして、10年物国債金利について、これまで「0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する」としていたのが、「1.0%の利回りでの指値オペ」に変更された。