日銀・植田総裁の次の一手は?

9月11日の債券市場で長期金利が0.7%を超え、2014年1月以来の水準まで上昇した。日銀の植田和男総裁が、9月9日付の読売新聞のインタビュー記事で「『マイナス金利政策』の解除を含め『いろいろなオプション(選択肢)がある』と語った」と報じられたことが材料視されたようだ。日銀は9月21〜22日に次回の金融政策決定会合を予定している。7月に金融政策運営のあり方を見直した植田総裁は、さらなる修正に動くのか。マイナス金利の現状と解除に向けた論点について、元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)

(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)

3%のインフレ下にもかかわらず政策金利がマイナス

 植田日銀総裁は、新聞のインタビューに対し、次のアクションにはいろいろな選択肢があると答えた旨が報道されている。その候補の一番は、マイナス金利政策をゼロ金利政策に戻すことではないだろうか。

 日銀は2016年9月以降、短期から長期にわたる金利全般に強い押し下げ圧力を加える「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を続けてきた。直近1年ほどの動きで明らかになったのは、長期金利は操作できていたかにみえていたのが、実は常に完全に操作することはできなかったということだ。

 では、短期金利はどうなのか。

 ホームページによれば、日銀は1998年以降、無担保コールレート(オーバーナイト物)を政策金利として金融調節を行うようになった。この金利は、銀行間の資金繰りの最終的な帳尻が調整されるインターバンク市場で形成される。

 この短期金融市場における日銀の金利操作能力は揺らいでいない。非伝統的な金融政策の下では、政策金利はゼロあるいはマイナスとされるが、プラスの時もそうでない時も、この短期金利は日銀が操作できている。

 したがって、もし2016年1月に導入したマイナス金利政策を変更するとすれば、それは操作できなくなったからではなく、日銀の意図が変わったことを意味する。

 当然、現時点で短期の政策金利をプラスへと引き上げていくことが適当かどうかについては、いろいろな考え方がある。ただ、日本が長いこと経験したことのないようなこのインフレの状況で、政策金利がマイナスというのは奇異には感じられないだろうか。本来、プラスであるはずの金利がマイナスなのである。しかも3%ものインフレが続く中においてだ。