年初来のドル高圏で小康状態に入りつつあるドル円相場(写真:共同通信社)
  • 年初来のドル高圏で小康状態に入りつつあるドル円相場だが、円安相場のピークアウトが来年4-6月期に延びる可能性が出てきた。
  • その元凶は中国経済の減速に伴う輸出減。ドル円の需給環境は改善し始めているが、輸出減によって貿易収支の改善が思うように進まない。
  • 「円を売りたい人が多い」という事実は変わりそうになく、米国の利上げ路線の長期化も囁かれる状況を考えると、円安ドル高はもうしばらく続くか。

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

需給改善が円相場に反映されるのは年明け以降

 ドル/円相場は、ドルの年初来高値圏で小康状態に入りつつある。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止が確実に見通せない以上、キャリー取引における調達通貨の対象として円への需要は当面強いままであろう。

 8月17日、財務省から発表された7月の貿易統計はマイナス787億円と2か月ぶりの赤字となった。23カ月ぶりの黒字転化が騒がれた6月から一転、再び赤字である。

 重要なのは「基調的に黒字を稼げない」という基本的事実であり、単月の数字を針小棒大に騒ぐ姿勢にあまり価値はない。とはいえ、基調的に見ても「需給を背景とした円売り」がピークアウトしているのは事実だ。

 1~7月の合計で見た場合、貿易赤字は2022年の9.4兆円の赤字に対して、2023年は7.0兆円と改善は進んでいる(図表①)。この傾向は今後、月を追うごとに確認されるものだろう。

【図表①】


拡大画像表示

 8月、ドル/円相場でのドル高続伸を受けて「152円復帰か」という空気が強いが、基礎的な需給環境として、そこまで大きな話ができる状況にはない。当面は今年上半期の貿易赤字がラグを伴って下半期の円安相場を支えると見るが、その先の円売り圧力は落ち着く可能性は高い。

 よって、2020年秋以降、円安見通しを堅持してきた筆者も年明け以降の円安ピークアウトを見込んでいる。その頃、FRBのハト派色も強まれば、さらに円安収束に寄与するだろう。

 今回の貿易統計で注目すべきは輸出の不調に尽きる。