次々と不正が明らかになったビッグモーター(写真:ZUMA Press/アフロ)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

中古車業界の信用をぶち壊したビッグモーターの大罪

 次から次へと不正疑惑が飛び出しているビッグモーター。中古車販売最大手の不祥事であることばかりでなく、買い取り、販売、アフターサービス、保険と、不正が中古車ビジネスの上流から下流を漏れなくカバーしていることで中古車業界の信用をぶち壊しにしたという怒りの声が中古車販売業界から湧き上がっている。

 首都圏の中規模中古車販売会社の首脳はこう語る。

「中古車販売はもともとお客さまからの信頼度が非常に低い世界でした。平成前期までは事故車や水没車をそうと告げずに販売する事業者も珍しくありませんでしたから、信用されなかったのも当然でした。

 そんな業界の質を高めるため、中古車業界は査定の標準化、走行履歴の明示など、信用していただくための努力を積み重ねてきたのです。万全にはまだほど遠いですが、成果も出てきていた。それがこの一件で台無しになったような気がしています」

 中古車販売業界と並んでイメージダウンが懸念されているのは整備業界だ。こちらも整備士志望の若年層がどんどん減り、人材が確保できないケースが多発しているため、待遇改善などの“ホワイト化”に取り組みはじめていた。その矢先の不正は「やっぱり整備士は積極的に選ぶ仕事ではない」というイメージを世間に植え付けることになりかねず、ビッグモーターの罪は大きいと言うしかない。

 が、整備界はまだいい。クルマは乗りはじめたら必ず整備のお世話になるもので、顧客から信頼されるかされないかで事業者の選別、淘汰が進むだけだ。中古車販売業界は良心的な事業者まで「どうせボッタクリなんだろう」「何か不具合を隠しているんじゃないか」といった目で悪徳業者と一緒くたに見られるリスクが一気に高まっている。

「今は新車の供給不足の影響で中古車価格が高騰していますが、これはあくまで一時的なものとみています。もともと日本は中古車相場が諸外国に比べて安く、利幅を取るのが非常に難しい。新車の供給不足が解消して今の高騰が収まったとき、お客さまの中古車に対するイメージ悪化の影響がどの程度出るか。その度合いによっては真面目な事業者も多数巻き添えになるかもしれません」(前出の中古車販売会社首脳)