(写真:アフロ)

(柳原三佳・ノンフィクション作家)

 9月に相次いで日本列島に上陸した台風は、記録的な大雨と暴風を各地にもたらし、甚大な洪水被害を発生させました。9月18日に鹿児島県に上陸した台風14号は、九州や四国で平年の9月1カ月の2倍にあたる大量の雨を降らせました。

 また、台風15号は9月23日夕方から24日の明け方にかけて線状降水帯を発生させ、静岡県では複数の地点で観測史上1位の雨量を記録しました。その結果、多くの川が氾濫し、多数の家屋が浸水被害を受けたのです。

 今回の台風で被害を受けたのは、家屋だけではありません。概算ではありますが、宮崎県と静岡県を中心に、約2万8000台の車が水没し、再起不能になったと言われています(*株式会社タウ調べ)。

他人事ではなくなってきた愛車の水没

 2万8000台……、改めてその台数の多さに驚いてしまいますが、ある日突然、マイカーが水没し、まったく動かなくなってしまったら、いったいどうすればよいのでしょう。また、車両保険をかけていなかった場合、水没した車はその後どうなるのか……。

〈マイカー水没、真夜中に鳴り響くクラクション… 台風直撃のオーナーが語る「被害車両の現実」〉(柳原三佳:Yahoo!ニュース 個人)

 上記は、9月24日未明に静岡市内を直撃した台風15号によって、夫婦で所有していた車が2台とも水没してしまった方へのインタビューです。記事の中で、水没した無人のプリウスが、真夜中にヘッドライトを点滅させ、クラクションをけたたましく鳴らす動画を紹介していますが、オーナーの方はその情景を、アパートの窓からただ見ていることしかできなかったそうです。

 地球温暖化で洪水が多発している今、想定外の水害は決して他人事ではありません。あれから2カ月がたち、9月の台風の記憶が薄れている方も多いことでしょう。しかし、被災地では今も大量の水没車の処理が継続中で、中古車不足も続いています。

 そこで今回は、車の大量水没という過酷な現実と回収作業の苦労、そして、廃車車両のその後について、静岡県の現場で引き取り業務に携わってきた「株式会社タウ」(https://www.tau.co.jp/)の解体事業準備室次長の加藤邦久さんにお話を伺いました。