筋肉で注目を集める藤澤選手に対する心ないコメント

 加えて、藤澤選手の大会出場を伝える記事はYahoo!トピックスに取り上げられて、さらに情報は広がった。

 中にはコメントが4000を超えるものもあり、「努力がすごい」「かっこよすぎる」との肯定的なコメントがついた。ただ一方で、「以前の可愛らしいときの方がよかった」などと、変化を受け入れられない否定的なコメントも相次ぎ、ネット上はちょっとした騒ぎになった。

 このSNSやウェブ界隈のネガティブな反応を見て思い出したのは、数年前に女性アスリートに向けられたメイク不要論だ。競技に化粧は不要、練習に注力すべきだという声だ。

 中でも、10代から第一線で活躍してきたスキージャンプの高梨沙羅選手は年頃になり、自然と化粧をするようになっただけなのに厳しい批判にさらされた。

 メイクと競技への姿勢は両立するものであるし、「化粧をする暇があれば練習を」などと言う批判はお門違い。全く腹立しいものだ。最近はメイクへの言及こそ減ってきてはいるが、女性アスリートに清廉性を求めるファンは今も多いのだと、藤澤選手への心ないコメントを見て改めて感じた。

 化粧もボディーメイクもなりたい自分になるための手段の一つだ。プライベートの充実は競技へのエネルギーにもなる。その努力が匿名コメントで傷つけられ、アスリートたちが消耗するのはとても悲しい。

 藤澤選手は、スキップというポジションもあり、筋肉で注目を浴びたことはなかった。むしろ、SNSを通じてトレーニングの様子を発信しているチームメイトの吉田知那美選手のほうがそのイメージが強かったかもしれない。

 とはいえ、ふんわりとした優しげな印象の藤澤選手もハードなトレーニングをいとわないアスリートだ。ボディーメイクによる見た目の変化に衝撃を受けた方も多いだろうが、以前から「トレーニングが好き」「負けず嫌い」と語っていたことを考えると、「らしい」挑戦だったのではないかと感じている。

北京オリンピック決勝で敗れ、涙を流す藤澤選手(写真:共同通信社)