なぜ小学校の算数理科を活用できない?
海の中で物体が受ける水圧について、この事故の関係者は実感を伴う理解を持っていなかったことが察せられます。
高校生が小中学生にも分かるよう説明できることを念頭に、平易に解説してみます。
水圧をプレッシャー「 p 」とすると、ざっくりと
p = ρgh
とモデル化した数式に表せます。ここでρとは水の密度、gは重力加速度でhは水深になります。水の密度ρ≒1000kg/m3、重力加速度g≒ 9.8m/s2ですから
p≒h(メートル)×9800[ kg/s2]/m2≒10×h(キロパスカル)
この単位では多くの読者によく分からないかもしれないので、見慣れた気圧単位に直すなら 1気圧≒100キロパスカル程度なので、水深をhメートルとすると、その深さでの水圧は
p≒0.1×h気圧
になる。あるいは10メートル潜ると1気圧相当の圧力がかかる、と整理しておきましょう。
さて、読者は1気圧なんて大したことないと思っているのではないでしょうか?
実は人間の体は、仮に急速に変化すると、1.5気圧程度でも生命に関わる影響が出ます。
例えば0.3気圧程度の急速な変化で、私たちの鼓膜は簡単に破れてしまいます。爆発物の威力を例に以下、概算を列挙してみると
0.05気圧程度のインパクト:窓ガラスが割れる
0.1気圧程度のインパクト:サッシが壊れて変形
0.5気圧程度のインパクト:屋根瓦が飛ぶ
0.7気圧程度のインパクト:柱が変形したり折れたりする
1気圧というのは、地球上にへばりついている全大気の圧の合力で、実は只事ではない力であることがお分かりいただけるでしょうか?