大粒・肉厚・ジューシーな南高梅は、その後の梅需要の高まりとともに近隣の田辺市や印南(いなみ)町ばかりか他県でも栽培されるようになり、国内1位の栽培面積を誇る梅品種となった。

5月からの2カ月が梅農家の踏ん張り時

 紀伊半島をぐるりと周っている国道42号線は和歌山県中部の有田市周辺ではミカンの苗木が植えられている山々を見られるが、そこから南下し印南町あたりからは道の両側に梅の林が見られるようになる。そして身長よりも遥かに背の高いプラスチックの桶が道の脇に置かれているのも散見されだす。大人がゆうに4~5人は入れそうな大きな桶は梅干し造りのため「つけ樽」だ。いかにこの地が梅の産地であるのかを示している。

 地元の梅農家が語る。

「われわれ梅農家の1年の収入がこの5月からの2カ月にかかっているんです。5月中旬からは梅の木に実が出来た青梅の収穫が始まり、それが梅酒の梅になるわけです。枝になっている実を収穫するのも脚立に乗ったりして大変です。

 それが終わると今度は完熟して下に落ちた梅の収穫がはじまります。あらかじめ木の下に収穫用のネットをしいておいて、落ちた梅が傷つかないようにしています。これを拾い集めるのですが、これが梅干しになるワケです」

紀州の梅林。梅の実が完熟することになると、畳まれている青いネットを広げて、落ちてきた実を傷つけず効率的に収穫できるようにキャッチする(写真:アフロ)