イメージ写真(写真:アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 長野県中野市で25日の夕方、女性2人が刺され、駆けつけた警察官2人が猟銃で撃たれて、死亡した事件。長野県警は、そのまま自宅に立てこもっていた青木政憲容疑者(31)の身柄を翌朝4時半ごろに確保し、殺人容疑で逮捕した。青木容疑者は、同市の市議会議長の息子だった。父親は即日、議員辞職している。

 死亡したのは、近くに住む村上幸枝さん(66)と竹内靖子さん(70)、それに通報を受けて駆けつけた中野警察署地域課の玉井良樹警部補(46)と池内卓夫巡査部長(61)。

パトカーに近づき、運転席側の窓から猟銃で発砲

 事件は25日の午後4時25分ごろ、畑仕事をしていた男性が逃げてくる村上さんを目撃。その背後から迷彩服に迷彩帽、サングラス、マスクをした青木容疑者が追いかけ、そのまま村上さんの背中や胸を刃渡り30センチほどのサバイバルナイフのような刃物で刺した。青木容疑者は男性に「殺したいから殺した」と言い放って、その場を去った。

 この頃にはすでに別の場所で、竹内さんが刺されていたとみられる。ふたりは散歩仲間で、この時間帯はいつも青木容疑者の自宅近くを歩いていた。

 程なく、パトカーのサイレンを鳴らして中野警察署の2人の警察官が駆けつけると、青木容疑者が再び現れ、停車したパトカーに近づき、手にした猟銃を構えて、運転席側の窓から発砲。目撃者によると、この時の青木容疑者の目は血走り、ニヤリと薄ら笑いを浮かべていたという。それから青木容疑者は自宅に戻って籠城。県警は周辺の半径300メートルの近隣住民を避難させ、通行を規制した。

 まさに猟奇的な事件だった。メディアは競うように青木容疑者のひととなりを聞き出し、生い立ちを追って報じる。中学校の卒業文集の作文まで読み上げるテレビ情報番組もあった。無抵抗の高齢女性を襲い、至近距離から猟銃を発砲した残虐非道な犯行は、決して許されるものではない。4人も殺害したとなると、まず極刑は避けられない。