パンデミックで男を上げたデサンティス

 トランプ氏はデサンティス氏とは浅からぬ関係がある。

 デサンティス氏が、上院の陣笠議員からフロリダ州知事選に出馬した際に、劣勢だったのを物心両面から応援したのはトランプ氏だった。

 物心両面でお世話になったデサンティス氏はトランプ氏に頭が上がらない。

 ところが、共和党が大敗した2022年の中間選挙では、同年の州知事選でデサンティス氏は投票数の59%を獲得して再選された。

 共和党敗北の要因は、トランプ氏が予備選で応援した上下両院選候補者が多数落選したためだ。

 その中でデサンティス氏は、バイデン政権によるマスクやワクチンの義務化に反旗を掲げて保守層に認められ、頭角を現した。共和党の新星として期待を集めた。

「レッド・ステート」(共和党支配州)の州知事として、反LBGTQ(性的少数派)、人工中絶規制強化、「陰謀論」拒絶など保守・リベラルが対決する「カルチャー・ウォー」で保守派強硬路線を貫いてきた。

 一部では「ミニ・トランプ」と呼ばれてきた。

 デサンティス氏の路線はトランピズムをなぞったものだが、高学歴、従軍歴、若さ、スキャンダルなし(犯罪・起訴歴、不倫・セクハラ疑惑ゼロ)というクリーンさも手伝って、「トランプ・ファティーグ」(トランプ疲れ)を患う一部の共和党員の共感を呼んでいた。

 デサンティス氏の政治スタンスは平たく言えば、こうだ。

一、ホモやレズは非生産的であり、健全な家庭制度を破壊する。同性愛などについては小学校高学年まで教えてはならない。

二、中絶は神の摂理に反する。妊娠6カ月以降の妊婦に対する中絶は禁ずる。

三、米国史で白人が他人種を抑圧したことばかり強調するのは誤りだ。

四、ディズニーはフロリダ州が決めた反LGBTQ法を批判したが、「罰則」としてフロリダにあるディズニーワールドに与えてきた「治外法権」を剥奪する。

五、中国共産党が率いる中国の経済、軍事、政治的冒険主義は許せない。米国は日豪などの同盟国やインドとの関係を強化し、中国に立ち向かうべきだ。