物価と不動産は何とか持ちこたえた
輸出が減ったのに対して、ウクライナへのロシアの侵攻を機にエネルギー価格が急騰して輸入額が跳ね上がり、巨額の貿易赤字に陥ってしまったのだ。
韓国経済の各種指標が悪化したのは、半導体不振、対中輸出減少、エネルギー価格急騰など「尹錫悦政権の政策ではいかんともしがたい外部要因によるところが大きい」(韓国紙デスク)
だから、マクロ経済が不振だからといって経済政策に厳しい採点をつけるのは酷だろう。
世界経済についての見通しなどから、大統領就任時点で「経済はかなり悪くなる」ことも十分予測できていた。
では、経済成長率や輸出が厳しくなるという点は「織り込み済み」としても、それ以外に良かった点、悪かった点は何だったのか。
何とか持ちこたえているのが物価と不動産対策だ。
国際的にエネルギー、食料品価格が急騰したことで韓国の消費者物価指数(CPI)は、尹錫悦政権発足と同時に跳ね上がった。
2022年6月、7月と連続して6%台になった。「物価高」は政権批判に直結しかねない重大問題だ。
ところが、中央銀行である韓国銀行と呼吸を合わせながら物価対策に力を入れて2022年後半は何とかCPIを5%台に抑えた。
2023年2月4.8%、3月4.2%、4月3.7%と消費者物価は落ち着きを見せている。
尹錫悦政権発足後、韓国銀行は5回にわたって基準金利を引き上げた。政権発足時に0.5%だった基準金利は3.5%になった。
物価対策には利上げは不可欠だが、副作用も生みかねない。そのうち最も懸念が強かったのが「不動産暴落」だった。
前任の文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権の最大の失政の一つが不動産価格の急騰だったといわれる。
急激な利上げで不動産市場は冷え込んだ。
「それでも、不動産価格の暴落までは起きなかった。急騰を防ぐことができなかった前の政権に比べて、この点は評価できる」(大手銀行役員)
物価については電気、ガス、地下鉄など公共料金の引き上げを抑えたり、値上げ時期を遅らせた。
食品や生活物資、外食価格など品目別に細かいモニタリングを実施した。
不動産については、民間の金融機関と連携して、基準金利の引き上げによって住宅ローンの変動金利が一気に大幅上昇しないよう手を打った。