もう一つの労働改革もその必要性を理解する声は多い。労働時間の柔軟な適用など労使間で議論する内容は多い。

 労使問題について、尹錫悦政権は発足以来、「不法行為には厳正に対処する」として、これまでの政権では想像もできなかったほど一部労組に強い姿勢で臨んでいる。

 経営側、保守支持層からは強い支持を得たが、労組側は反発した。いまはとても「政府と労組との協議」ができる雰囲気ではない。

 そういう意味では、3大改革は、残念ながら具体的な成果どころか、進んでいるともいえない状況だ。

 実績が見えないから、一般の国民の中で3大改革が何か答えられる比率はかなり低いはずだ。

 財閥系企業の役員はこう話す。

「大きな改革を進めようとすればすべて法改正が必要だ。政権与党が少数派である今の国会では、何も進まない」

 だから、尹錫悦政権が経済政策、特に3大改革などで目に見える形で成果を出そうと思えば、2024年4月の総選挙で勝利して国会で政権与党が多数を占めるしかない。

 韓国紙デスクはこう話す。

「その総選挙で勝つためには、経済でポイントを稼ぐ必要がある。少なくとも、経済で悪材料が続出したら与党に勝ち目はない」

 結局、経済なのだ。

 韓国メディアによると、1年間で尹錫悦大統領がこなした経済関連会議や行事などの日程は110回に達するという。

 確かに毎日のニュースを見ていると、大統領が雇用対策、物価対策、輸出対策などについて閣僚や大統領室の首席秘書官から報告を聞いて指示を出す場面が本当に多い。

 半導体や自動車、新技術の工場や研究所などを視察する場面も多い。企業経営者とも頻繁に会う。外遊も積極的に活用する。

 今年に入ってからもUAE(アラブ首長国連合)や日本、米国を訪問した際には、経済団体や財閥のトップを同行し、必ずセールス外交を活発に進める。

 この10年ほど見ていてもこれほど「経済」に力を入れている大統領はいなかったのではないか。

 それほど、「経済」の重要性を認識しているのだ。

 この強い意欲が通じるか。不安定な世界経済に翻弄されるか。

 半導体市況の回復がいつなのか。ウクライナ情勢や米中関係はどう動くのか。重要性は認識していても、舵取りは大変だ。

 これまで1年間の経済運営に対する採点表も大事だが、これから1年間の経済採点表が、今後4年間の政権運営を左右する。

 それがよく分かっているだけに大統領の「経済関連日程」は今後もさらに増えるはずだ。