キーウではウクライナ軍は大口径の機関銃でタタタタタッと音を立てて連射し、低空のドローンを撃墜したが、クリヴィー・リフでは高空を飛ぶドローンに向けて迎撃ミサイルを発射した。12個のレンズを搭載したロシア軍の秘密偵察用ドローン「カルトグラフ」が撃ち落とされたのは筆者の宿泊先から南へ約3キロメートルの地点だった。さらに南の方で複数の爆発が確認された。

ロシア本土とクリミア半島を結ぶ「陸の回廊」を分断せよ

 多くのウクライナ軍部隊は前線に移動している。クリヴィー・リフの部隊は戦車や機械化歩兵、戦闘支援部隊で構成される。前線近くではロシア軍がウクライナ軍の補給拠点を攻撃し始めたが、あまり成功していない。攻撃にドローンが使われていれば、ロシア軍は新しい物資を受け取ったとみられる。ウクライナ軍の反攻はいつ、どんな形で始まるのか。

『戦争をどう戦うか(How to Fight a War)』を上梓した英キングス・カレッジ・ロンドンのマイク・マーティン上級客員研究員は英紙デーリー・テレグラフに寄稿し「明らかなのは双方が春に攻勢をかけること、もう1つは来年の米大統領選で対ウクライナの大規模軍事支援が争点化するため、年内に勝利に向けて前進する必要があるということだ」と指摘する。

 東部ドネツク州の要衝バフムートを巡る攻防でロシア軍は1日当たりサッカーのピッチ1面分を削り取ることに成功したものの、米国家安全保障会議(NSC)によると、ロシア軍は過去5カ月間に2万人以上の死者と約8万人の負傷者を出した。一方、ウクライナ軍は米欧からの武器弾薬と装甲旅団の訓練が整うまで時間を稼ぐことに成功した。