倉都康行さんは不肖わたくしの見るところ、その名に値する真の金融ジャーナリストとして日本では稀有な存在だと思っている。
と持ち上げられたところで、最近も『危機第三幕』『国際金融の大変化に取り残される日本』と粒揃いの著作をものしてきた倉都氏にはむしろトンダお節介かもしれないが、今回のネタはその倉都さんに気付かされた(正確にはジリアン・テットがFTに書いていたのを倉都さんが気付いた)ものなのだから、最初にお礼を言っておかなくてはいけない。
Financial repression、あえて訳語を探ると直訳で「金融抑制」、平たく言うと「金融不自由化(『金融自由化』の正反対)」が、時代のバズワードになるだろうというお話なのである。
これが金融のバズワード?
言葉の出典は、カーメン・ラインハートが最近出した研究論文「The Liquidation of Government Debt(政府債務の清算)」だ。
ラインハートといったら、邦訳『国家は破綻する・金融危機の800年』(原題This time is different)というケネス・ロゴフとの共著を世界的ベストセラーにした女性経済学者だが、このたびの論文は景気判断など手がけるので有名な全米経済研究所(NBER)から出た。
共著者が1人いるが、ラインハートの弟子に当たる若い女性経済学者である(日本にもっといてほしい存在である)。
長い論文をひととおり見て、簡単に要約すると、ラインハートがここで提言しているのは当たり前すぎて拍子抜けするテイのものだ。
お金を借りて金利を払っているとする。そのとき物価上昇率が金利より高いと、借り手の金利負担は実質でマイナスになる。
と、いうより、差し引きで得をし続けるから、お金を借りて補助金をもらっているのと同じ結果になる。