核にまつわる研究開発の拠点として米国有数の機関、ローレンス・リバモア国立研究所(カリフォルニア州)が、今年の7月19日、世界最大の発電会社と共同研究の取り決めを交わした。
「世界最大の」と修飾がつくと、それは米国にあるあれこれのことと相場が決まっていたのは昔の話。ここで言うのは北京の国営企業・中国華能集団である。
核開発の研究所、中国と関係強化
潜水艦発射ミサイルの核弾頭を開発した歴史を持ち、核融合研究で先端を行き、磁気浮上式鉄道の新種「インダクトラック」の実用化を目指していることでも知られるローレンス・リバモアが組んだ中国華能集団とは、中国全土に166の発電所を持つ。
ただし109ギガワット超にのぼる発電量の9割近くを火力に依存し、ゆえに環境負荷削減を迫られた企業だ。
ローレンス・リバモアと中国華能とは、シェールガスの採掘と活用などに加え、主として二酸化炭素の回収貯留という重要な技術の開発で協力し合うことになった。
米中環境・エネルギー協力一歩前進
このことは、2009年11月バラク・オバマ米大統領が訪中した際に両国で合意し、2011年1月胡錦濤中国国家主席が訪米したおり、その強化推進を米中で約束し合った環境・エネルギー面での協力政策が、さして注目こそ浴びないものの少しずつ前進していた事実を裏書きする。
これは、米国にとって対中関係のリスクヘッジ策であろう。
一連の協力が次世代技術の1つや2つ、実際に実らせるかもしれない。それを目がけた実利的動機は双方にあるだろう。が、将来にあり得る米中の角逐・対立の中、ここでつないだ糸がいわば鎹(かすがい)役になるとの期待が米側にはあるのではないか。