中国から帰国後の昨年11月、記者会見する鈴木英司氏(写真:AP/アフロ)

 2016年、日中青年交流協会の理事長として日中交流イベントの打ち合わせのために北京を訪問したところ、帰国直前になって、中国の情報・防諜機関である北京市国家公安局に拘束された。

 そして裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない。

公安調査庁はスパイ組織か

 本から抜粋すると、有罪になった罪状はこうだ。

(1)中国政府が「スパイ組織」と認定する公安調査庁から、鈴木氏が「任務」を請け負い情報を収集し報酬を得ていた

(2)2013年12月4日、鈴木氏が北京で湯本淵(タン・ベンヤン)さん(在日中国大使館の元公使参事官で、すでに中国に帰国)と会食した際、湯さんから北朝鮮関係の情報を聞き、その内容を公安調査庁に提供した

(3)提供した内容は「情報」であると中華人民共和国国家保密局に認定された

 ここからわかるように、中国当局は鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」と認定している。念のために公安調査庁について説明すれば、法務省の外局で国内外の情報を収集・分析している“スパイ機関”だ。アメリカのCIA(中央情報局)からは、日本側のカウンターパートの一つと認識されている。事実、公安調査庁の職員はCIAで情報収集研修をするなど関係は近い。

 公安調査庁は、基本的には対外情報活動はしていないことになっているが、実際は中国などで情報活動を行ってきた。事実、これまで中国当局に逮捕されてきた邦人の中にも、「公安調査庁のスパイ」だった人物が存在する。

 ところが鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)。