(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
5月8日に新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染症法上の分類が「5類」へ移行する。
現在、コロナは「2類」以上に相当する「新型インフルエンザ等感染症」の扱いである。国や自治体は、患者への入院勧告や患者・濃厚接触者への行動制限を課すことができるほか、外出自粛や営業自粛の要請など、広範に個人や企業の行動を制限できる。
「5類」になれば、季節性インフルエンザと同等の扱いになり、医療体制が平時に戻るほか、国や自治体が個人や企業に行動制限を課す権限がなくなる。
このコロナ「5類」移行は、個人消費にどのような影響を及ぼすであろうか。
出社機会の拡大で改善する消費マインド
岸田政権が発足して以降、感染が拡大しても「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」は発令されなくなっているため、コロナが「5類」に移行しても、個人消費への影響はあまりないようにも見える。ただ、実際には複数の経路で個人消費に影響するだろう。
まず、「5類」移行に前後して、企業が出社を要請する動きが広がっている。出社の機会が拡大すれば、巣ごもり消費は縮小するものの、外出に伴う出費が増える。これは、財消費やサービス消費の増加を意味する。
また、消費者のマインドの改善も期待できる。「5類」移行前の段階では、仮に感染者や濃厚接触者となれば勤務などで一定の行動制限が課されるため、不要不急なサービス消費を控える動きが続いているとみられる。だが、「5類」に移行すれば、不要不急なサービス消費へのためらいは薄れるに違いない。
なお、消費マインドという観点では、「脱マスク」の動向も重要だろう。
マスク着用の影響を直接的に受けるのは、化粧品等の消費であろうが、3月の景気ウォッチャー調査では、多くの業態で「脱マスク」の好影響を期待するコメントが見られた。
個人判断に委ねられた3月13日以降も、マスク着用を継続している者の方が多数派とみられるが、夏場に向けて「脱マスク」の動きは広がるだろう。今回の「5類」移行は、「脱マスク」を進展させる契機となり得る。