(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
2023年の春闘は3月15日に集中回答日を迎えた。自動車総連、電機連合、JAM(ものづくり産業労働組合)、基幹労連、全電線の5つの産業別労働組合より構成される金属労協が、製造業の大手企業におけるベースアップの要求・回答状況を取りまとめている。
実質的に100%の組合がベアを要求した2023年春闘
近年の春闘交渉を振り返ると、ベアを要求した組合の比率は72%(39/54)にとどまるなど、2021年に組合側がベアを要求する動きが一時的に縮小した。組合側が交渉材料として重視する消費者物価上昇率が低位だったほか、コロナ禍後の業績悪化により、自動車や造船重機等の業種でベア要求を見送る動きが広がったためだ。
だが、2022年および2023年の春闘交渉では、組合側がベアを要求する動きが拡大している。
ベアを要求した組合の比率は2022年に98%(53/54)へ上昇。2023年には94%(51/54)へ小幅低下したが、これは昨年2年分を一括して要求・妥結した鉄鋼業の3組合がカウントされなかった影響によるものだ。実質的に100%の組合がベアを要求した。
過去2年にベアを求める動きが広がったのは、昨年の春闘はウクライナ危機前からの原油高進行により物価上昇が予想されたため、そして今年の春闘はウクライナ危機後の資源高・円安進行により実際に物価が高騰したためだ。