2050年には世界の人口の4分の1を占めると予測されているアフリカ。2019年に発足したAfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)にも、エリトリアを除く54カ国が署名しており、2021年に一部運用が始まっている。約13億人の人口と約3.4兆米ドルのGDPを抱える単一の大陸市場創設が目標だ。
もっとも、歴史的に欧州の影響力が残るアフリカだが、昨今は「一帯一路」を掲げる中国が存在感を高めている。その中国を警戒する米国も、アフリカに対する支援を強化しつつある。これからの世界のカギを握るアフリカに対して、欧中米が水面下でしのぎを削っているのが現状である。
この中で、「ASEANの奇跡」を演出した日本はどのようにアフリカに向き合うべきなのか。岸田首相の歴訪を前に、日本がとるべき支援やアフリカを巡る各国の動きを分析する。1回目の今回は、欧州とも中国とも米国とも違う日本型支援の可能性について。
(大久保明日奈:オウルズコンサルティンググループ プリンシパル)
中国とロシアを念頭に置いたアフリカ歴訪
明るい陽の光と、青々とした緑が輝く季節。毎年4月末から始まる大型連休に心躍らせている人も多いことだろう。
先日、その大型連休に合わせて岸田首相がアフリカを訪問すると報じられた。お膝元の広島で開催される5月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークの4カ国を歴訪する。南半球を中心とする新興国や途上国、いわゆる「グローバルサウス」との連携強化が目的だ。
このタイミングで日本がアフリカとの関係強化を図ろうとする背景の一つに、アフリカで影響力を高める中国の存在がある。
中国は近年、広域経済圏構想「一帯一路」を通じて、インフラプロジェクトを中心に、アフリカに多額の資金を投じている。アフリカ諸国は欧州列強の植民地だったため、いまだにヨーロッパの影響が色濃く残るが、2020年には世界全体の対アフリカ投資の11%を中国が占めるなど、中国の存在感は増す一方だ。
中国のアフリカ進出の狙いは、豊富な資源の確保とアフリカにおける親中的な世論の形成だと言われる。アフリカ諸国の対中債務の増加とそれに伴う「債務の罠」に対する懸念は高まるものの、これまでに中国がアフリカにおいて、強固な存在感を築いたことは否定できない。
また、ウクライナに対する軍事侵攻を続けるロシアの存在も見過ごせない。