尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領が4月24日から5泊7日間の日程で訪米中だ。韓国大統領としては12年ぶりの「国賓訪問」なのだが、実は韓国内の世論はそれほど盛り上がってはいない。
唯一の同盟国である米国による「盗聴疑惑」への困惑が隠せないのと、訪米前におこなった海外メディアによる尹大統領へのインタビューにロシアと中国が強く反発していることなど、尹錫悦外交をめぐる雑音が絶えないためだ。
前政権の「安保は米国、経済は中国」の方針を転換
尹錫悦政権は誕生以前から米韓同盟を強調してきた。前任の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「安美経中(安保は米国、経済は中国)」という名目で「バランス外交」を外交基調にしてきたが、実際には安保面で米国とたびたび摩擦を起こした。
朝鮮半島のTHAAD配備をめぐっては、中国に「3不」(米国のミサイル防衛[MD]への不参加、THAADの追加配備はしない、日米韓軍事協力を軍事同盟に発展させない)を約束した。文在寅大統領は、自身の政権が発足する直前に星州(ソンジュ)に臨時配置されたTHAAD基地を正式に配置せず、「環境評価」を口実に5年間も放置したことで、米国側の怒りを買っていた。
元徴用工賠償問題などで日本と鋭く対立した挙句、日韓GSOMIAを破棄すると公表したこともあったが、米国から「強い憂慮と失望感を表明する」という“公式圧迫”を受けて振り上げた拳ひっそりと下ろしたこともある。
このため文在寅政権時代の韓国には、韓米関係に対する憂慮が常に付きまとっていた。だからこそ文在寅大統領に代わり保守政権を樹立した「国民の力」と尹錫悦大統領は「米韓関係復元」を喫緊の外交の課題としてきた。