軍用無人航空機は、用途により無人攻撃機、無人偵察機、無人警戒監視機、その他通信中継機、電子戦機や標的機などに分類される。
上記の用途に用いられる無人航空機は既に実用化されている。
しかし、無人で空中格闘戦などの制空戦闘を行う無人戦闘機(unmanned combat air vehicle:UCAV)には、人工知能(Artificial Intelligence:AI)による完全自律飛行技術が必要なため、開発にはまだ時間がかかると見られていた。
ところが、中国がAI搭載の無人戦闘機の開発に成功したというニュースが飛び込んできた。
2023年3月6日、香港の英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポスト (SCMP) は、次のように報じた。
「中国航空力学研究開発センター(China Aerodynamics Research and Development Centre)の研究者が、AIが操縦する航空機(AI機)と人間が操縦する航空機(有人機)同士の実戦を想定した格闘戦(ドッグファイト)を行ったところAI機が勝利したとの論文を今年2月に中国航空学会誌『Acta Aeronautica et Astronautica Sinica(航空学報)』に発表した」
一方、米国はAI機の試験飛行を成功させたところである。
2023年3月27日、米国防高等研究計画局(DARPA)は、2022年12月にエドワーズ空軍基地で、「F-16」 戦闘機を基本設計としたテスト機「X62A」による飛行を実施し、AIのアルゴリズムで機体の操縦を制御し、数日間にわたり出撃を想定した離着陸や、武器使用時の能力などを確認したと発表した。
さて、約3年前の話になるが、2020年8月、DARPAが主催する「アルファ・ドッグファイト競技会」のメインイベントで、人間とAIによるF-16をシミュレートした空中格闘戦(ドッグファイト)が史上初めて行われた。
結果はヘロン・システム社のAIが経験豊富な元空軍F-16パイロットに5-0で圧勝した。
詳細は拙稿「戦争もAI時代に本格突入、無人機に勝てない「F-35」」(2020.10.26)を参照されたい。
筆者は、前述の拙稿の中で「今回の競技会は、実機ではなくシミュレーション上で行われたものであるが、近い将来、AIが操縦する実機が、経験豊富なパイロットが操縦する実機に勝利することが予見される」と述べた。
万一、上記SCMPの報道が事実ならば、AIが操縦する実機が、経験豊富なパイロットが操縦する実機に勝利する時が筆者が思っていたより早く到来したことになる。
本稿では、AIの軍事利用の動向について考えてみたい。
初めに、SCMPの報道について述べ、次に米国は人工知能(AI)技術の開発競争において、中国との競争で勝てる見込みはないと指摘するニコラス・シャラン氏の発言について述べる。
次に、米国が中国に勝てない最大の理由であるAIの活用をめぐる倫理上の問題について述べる。
そして、最近、米国が提唱したAIの軍事利用に関する国際規範について述べ、最後に、AI搭載航空機の開発状況について述べる。