3.米国提唱のAI軍事利用に関する国際規範
AIの責任ある軍事利用をテーマにした高官級会議が2023年2月15日(現地時間)、オランダ・ハーグで開幕した。
同テーマの国際会議が開かれるのは今回が初めてである。
韓国とオランダが2022年11月に開いた首脳会談での合意に基づき共催した。会議にはオランダと韓国のほか、米国、日本、スイス、パキスタンなどの高官のほか国際機関や市民団体などの関係者約2000人が参加した。
同会議で、米国のボニー・ジェンキンス国務次官は2月16日、「急速に変化するAIの軍事利用に関し、責任ある強い規範を作る義務がある」と強調し、次の規範を提案した。
米国が提唱するAI軍事利用に関する国際規範の抜粋(出典:読売新聞2023年2月28日)。
①国際人道法に合致した形で使用
②核兵器の使用は人間が完全な関与を維持
③自軍のAI開発や使用に関する原則を公表
④AI兵器の開発や使用などに際し、人間の関与を含む適切な扱いを保証
⑤AI兵器担当スタッフの十分な訓練を確保
⑥意図しない結果を回避する能力を設計上、組み込む
米国が提案したこの規範は、「AIと自律化技術の責任ある軍事利用に関する政治宣言」と呼ばれ、技術的に重要な時期にある軍事AIの開発に関する米国の試みの一つである。
この文書は米軍を法的に拘束するものではないが、同盟国がその原則に同意し、責任をもってAIシステムを構築するための一種の国際基準を生み出すことが期待されている。
なぜ、米国はAI軍事利用に関する国際規範を提案したのか。
その理由の一つは、米国防総省の多くの当局者が、軍全体でのAIの利用拡大が不可欠かつ不可避であると考えている点にある。
自律型兵器の開発や使用を規制した場合、倫理など意に介さず開発を進める中国やロシアなどの競争国に比べて、この分野における米国の進歩が遅れると当局者たちは危惧している筆者は見ている。
グーグルの元最高経営責任者(CEO)のエリック・シュミット氏は、米国が中国に遅れをとらないよう米国防総省のAIの開発を強化すべきであると強調している。
また、米外交問題評議会の研究員であるローレン・カーン氏は、米国の新しい宣言が世界的に軍事AIをより責任をもって運用するための土台になりうるとして、歓迎している。(出典:WIRED US 2023/3/18)
米国務省が提案するこの規範が、将来、AIの軍事利用に関する国際基準の制定につながるかが注目される。