国連は、2月24日の第11回緊急特別会期(Emergency Special Session:ESS)の総会において、ロシアの戦争犯罪に対する「公正で独立した調査と訴追」の必要性や「露軍の即時・完全・無条件の撤退要求」などを盛り込んだ決議を採択した。
全加盟国193か国のうち141か国が賛成し、緊急特別会期の総会で重要問題の採択に必要な投票の3分の2以上を確保した。
ロシアやベラルーシ、北朝鮮など7か国が反対し、中国やインドなど32か国が棄権した。
ウクライナ情勢を巡る第11回緊急特別会議(ESS)の総会決議は2022年2月24日の侵略開始以降、6回目となる。
過去5回のESSの総会決議には、戦争犯罪の調査と訴追の必要性が盛り込まれず、今回初めて明記された。
このほか「露軍による重要インフラや病院への攻撃の即時停止」や「捕虜の交換や民間人の帰還」なども求めた。
決議案はウクライナが提出し、共同提案国は最終的に日米欧など70か国以上に上った。
総会決議には安全保障理事会決議のような法的拘束力はないが、ウクライナのドミトロ・クレバ外相は決議採択後、総会の議場前で記者団に「国連加盟国はロシアに改めてウクライナからの軍の撤退を要求した。結果に満足している」と述べた。
林芳正外相は23日の同会合で演説し、「圧倒的多数はウクライナの平和を望んでいる」と各国に賛成を呼びかけた。
ロシアには「即時かつ無条件に軍を撤退させるべきだ」と訴え、「核兵器保有国としての立場も悪用している。核の威嚇は決して許されない」と非難した。
さて、ウクライナ戦争をめぐり、国連の存在意義が問われている。
国際の平和と安全の維持を担う国連安全保障理事会は、常任理事国の拒否権により機能不全に陥っている。
ところが、「大国の興亡」の著者で著名な歴史学者であるイェール大学教授のポール・ケネディ氏は、国連は拒否権の乱発により機能不全になっているのでなく、そのように設計されているという(詳細は後述する)。
従って、大国の拒否権濫用防止策の一つとして生み出された「緊急特別会期(ESS)」の重要性がさらに増してきた。
筆者は、拙稿『ロシアは常任理事国の特権も失うか、40年ぶり開催のESSとは』(2022.3.28)で、「国連は、『平和のための結集決議』に基づき『緊急特別会期(ESS)』を開催し、平和維持部隊の派遣を含む軍事的強制措置を採択すべきである」と述べた。
その考えは今も変わっていない。
以下、初めに国連史上で最も記憶されるべき決議である「平和のために結集決議」について述べ、次にかつて、ESSの総会決議により派遣された国連軍について述べ、最後に国連安保理改革について述べる。