虫が食べる葉によって味が異なる

 虫の糞がお茶になる。丸岡さんがそれに気づいたのは、研究室でマイマイガの幼虫の糞から、いい香りを感じた時だった。

 コロコロとした糞を乾かして、熱湯を注ぐと、マイマイガが食べていたサクラの香りが凝縮された「お茶」だった。

 さらに、虫と葉の組み合わせを約60種類、試作してみて、同じ虫の糞でも、食べる葉によって違う味の「お茶」になることがわかった。

 そもそもだが、虫の糞をなぜ口にしようとしたのか?

「2022年、博士課程に進学して、学位取得後の進路を探していました。その選択肢のひとつとして昆虫食があったのですが、その世界を見ると『食の多様性』といいながら、みんながコオロギに焦点を当てて、パウダーにするなど、同じことをやっている。疑問を感じました」

 糞のお茶は「植物と虫の多様性をそのまま飲む」わけで、生態系やいきものの多様性を伝えることができる。

 丸岡さんは広報活動を開始し、クラウドファンディングで開発支援を呼びかけた。そして2023年2月、目標額100万円を大きく上回る300万円の支援獲得に成功した。