「ARTISTS’ FAIR KYOTO(アーティスツフェアキョウト) 2023」会場の一つとなった京都府京都文化博物館別館(写真:顧剣亨)

アーティストはお金のことを考えるな——。美術教育で共通認識となっていた不文律を真っ向から否定するアートフェアが開かれた。出展の中心は若いアーティスト。来場者に自らの作品をPRし、商談、契約までその場でやってしまう。いわば美術品の「産直販売」ともいえるアートフェアが目指すのは、アーティストという仕事を「食える」ものに変えることだ。それは世界で急成長するアート市場で日本が巻き返すきっかけにもなり得る。

(沢田眉香子:編集・著述業)

「アーティストはお金のことを考えるな」では続かず

 子供から「芸術系大学に行って、アーティストになりたい」と言われたら、多くの親は「食って行けるのか?」と不安になるのではないだろうか。

「美大芸大就活ナビ」を利用する学生を対象に行ったアンケート※1では、2022年6月末時点の内定率は21.1%。ほぼ同時期に、リクルートキャリアが一般の大学生対象に行った「就活プロセス調書」での就職内定率が68.5%であったのと比べて、美大・芸大生の就職内定率は圧倒的に低い。

※1:ユウクリ(東京都渋谷区)が運営する調査機関「クリエイターワークス研究所(CWL)」が行なったアンケートによる。

 就職せずアーティストを志す学生が多いことも一因だが、大学では「アーティストはお金のことを考えるな」という教育姿勢が根強い。このため、多くの美大・芸大生たちは制作と経済活動を両立させる心構えのないまま卒業し、とたんにお金と生活の問題にさらされる。

 アーティストという仕事が「食える」、つまり持続可能な仕事になりにくいこの状況は、日本のアートマーケットが欧米よりはるかに見劣りする原因になっている。それを変えるかもしれない試みが、京都で始まっている。