3月9日、ウクライナ東部ルハンシク州クレミンナで、ロシア軍の陣地に向け自走多連装ロケット・システム「BM-21グラド」での攻撃準備をするウクライナ軍・第95独立空中強襲旅団の兵士(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 ウクライナでは、東部で激しい戦闘が繰り広げられている。バフムトを完全掌握しようとするロシア軍に対して、ウクライナ軍が必死に抵抗している。

錯綜する情報と周辺諸国の動き

 ニューヨーク・タイムズは、3月7日付けで、ノルドストリーム爆破事件は、ウクライナを支持するグループによる破壊工作だったことを示す情報があると報じた。ゼレンスキーや側近が関与した形跡やウクライナ政府関係者の指示で実行されたことを示す証拠はないという。また、プーチンに敵対するロシア人も加わっている可能性も示唆されている。

 ドイツ公共放送ARDなどが作る調査報道グループは、検察の捜査内容として、「ウクライナ人が経営する会社から国籍不明の男女6人がヨットを借り爆弾を仕掛けた」と報じている。

 真相は不明だが、ロシアと戦争中であること、またパイプラインがウクライナを経由したほうがウクライナの収入になることなどを考えると、ウクライナを支援する者による犯行であることは十分に考えられる。

 ウクライナの周辺諸国でもロシアは様々な工作を展開している。

 ウクライナの隣国、モルドバで、ロシアが親西欧派の政権を倒すためにクーデター計画を練っていることは、2月18日の本コラムで記したが、ロシアは攻勢の手を緩めていない。

(参考)【舛添直言】露がモルドバでクーデター計画、プーチンは帝国再興を諦めない

 2月21日、プーチンはモルドバの主権を尊重するとした2012年の政令の撤回を決めた。親露派が分離独立を宣言した「沿ドニエストル共和国」にはロシア軍が駐留しているが、ロシア外務省は、24日、駐留ロシア軍の安全を脅かす行為は「ロシアへの攻撃とみなす」と警告した。