(舛添 要一:国際政治学者)
ウクライナ戦争が始まって1年が経過したが、停戦の見通しは立たず、戦闘は激化している。東部のウクライナ側の拠点バフムトに対して、ロシア軍が集中的な攻撃を行っている。これに対して、ウクライナ軍は、春に大規模反転攻勢に乗り出す予定で、クリミアの奪還も目指すという。
ロシア、長期戦への方針転換
NATOはウクライナに武器支援を継続しており、2月24日にはポーランドがドイツ製の主力戦車「レオパルト2」4両を引き渡している。ドイツは18両、スウェーデンは10両、ポルトガルは3両を供与する。これらの戦車で戦車大隊の編成が可能となる。
ポーランドは、自国製の主力戦車「PT91」60両も引き渡すという。アメリカは、主力戦車エイブラムス31両、イギリスは主力戦車チャレンジャー2を14両供与する。
供与側はウクライナ兵に戦車操作の訓練を行っているが、ゼレンスキー大統領が期待するほど迅速には進んでいない。ウクライナにとっては、西側からの武器支援が命綱であり、戦闘機や長射程のミサイルの供与も求めている。
しかし、戦闘機となると、戦車以上に要員の訓練が必要であり、また、機体の整備にも熟練の要員が要る。専門家によれば、実戦配備までには最低でも1年半はかかるという。
イギリス国防省は、2月24日、ロシアがウクライナ全土を掌握して、現政権を打倒するという当初の目標を撤回して、ウクライナ軍の戦力を低下させることに主眼を置く作戦に切り替えたという分析を公表した。つまり、長期戦に持ち込み、ウクライナを疲弊させる戦略だという。
この作戦は、短期決戦から長期戦への方針転換であり、戦争は長引くと考えざるをえない。