刑事裁判で大阪地裁の裁判官は、「本件事故時はてんかん発作で意識を喪失していた」と認定。その上で、「てんかんの危険性を軽視していたと言わざるを得ず、厳しい非難に値する」として、危険運転致死傷罪の成立を認め、2019年3月、懲役7年(求刑懲役10年)の判決を言い渡しました。
加害者は現在、刑務所に収監されています。
当初は女子平均賃金の40%と主張していた被告
本件裁判については、一昨年、以下の記事で取り上げました。
(参考)「障害あっても努力家だった娘の人生、なぜそんなに軽んじる」 あまりに非道、「逸失利益は聞こえる人の40%」の被告側主張(2021.6.9)
上記タイトルにもある通り、裁判が始まった当初、被告側(損保会社は三井住友海上)は、女性平均賃金の40%(153万520円)で算出すべきだと、極めて低額の主張をしていました。安優香さんが生まれつきの難聴だったことから、「聴覚障害者には『9歳の壁』という問題があり、高校卒業時点での思考力や言語力・学力は、9歳くらいの水準に留まる」というのがその理由です。
ところが裁判の途中で、被告側は突然それまでの主張を変えてきました。「原告らの指摘により、聴覚障害者の平均賃金の存在を知った」ということで、今度は「聴覚障害者の平均賃金(294万7000円)」を基礎収入として、算出しなおしたのです。
井出さんは語ります。
「結果的に裁判所が下した85%という判断は、数字だけを見れば被告の主張(60%)と原告の主張(100%)の間を取ったかたちになりました。中には、60%から引き上げられてよかったという方もおられるかもしれません。しかし、私どもを支援してくださっている弁護団は、この15%の減額自体、『障害者差別』だと、厳しく批判されています」