(英エコノミスト誌 2023年2月18日号)

ウクライナの戦場は米スタートアップにとってまたとない実験場となっている

アンドゥリルやパランティアにとって、ウクライナは格好の実験場になっている。

 ウクライナで使われている西側の軍事装備品の大半は、20世紀の戦争に関心のある人には聞き覚えがある。

 地対空ミサイルや対戦車兵器、ロケットランチャー、榴弾(りゅうだん)砲といったものだ。

 だが、ウクライナが人工知能(AI)や自律監視システムをはじめとした西側の情報技術(IT)を利用していることも、あまり目立たないにせよ、強烈な衝撃をロシア軍に与えている。

 民間企業はウクライナ軍に人工衛星やセンサー、無人ドローン、ソフトウエアを供給している。

 こうした商品は戦場についての大量のデータをコンパクトにまとめてアプリに送り込み、地上の兵士が敵に狙いを定める手助けをしている。

 米国のある防衛当局者は感謝の気持ちを込めて、これらの製品を「砲兵隊向けのウーバー」と呼んでいる。

イーロン・マスクだけではない

 この新しい形の戦争の背後には、米国ハイテク業界でも右に出る者がいないほど型破りな賢者がいる。

 イーロン・マスク氏のことは誰もが知るところだろう。

 同氏のロケット会社スペースXは、人工衛星「スターリンク」のサービスをウクライナに提供している(もっとも、現在は戦場からのアクセスを制限している)。

 本誌エコノミストは先日、マスク氏と同様に慣例にとらわれない2人の起業家に会った。

 1人目はアンドゥリルの共同創業者パルマー・ラッキー氏(30歳)。

 2017年設立の同社は監視塔やドローン、無人潜水艇、そしてそれらを支援するAIシステム「ラティス」などを製造している。

 あごひげ、アロハシャツ、そしてビーチサンダルがトレードマークのラッキー氏は、防衛関連企業の経営者にはとても見えない。

(脳裏に浮かぶのは、マーベル・コミックの「アイアンマン」の主人公で機械のことばかり考えているトニー・スタークだ)