(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
最近、北朝鮮では離婚が急増している。この問題に対処するため、北朝鮮は1月3日、党中央委員会からの緊急指示で、最高裁判所をはじめとした地方裁判所に離婚を認める判断を禁止する「離婚禁止令」を出した。北朝鮮社会の構成要素である「細胞」を守ることがその目的だ。
昨年9月頃、平壌の人民裁判所で、30代の夫婦に対する離婚裁判が開かれた。離婚理由は、「資本主義反動思想文化排撃法によって反動階級と認定された夫と別れたい」。韓国ドラマを見ていた夫が資本主義反動思想文化排撃法に違反したかどで逮捕され、そんな夫とは一緒に暮らすことができないと妻が離婚訴訟を起こしたのだ。
夫は金策工業総合大学でコンピュータ工学を専攻した平壌情報センター(PIC)勤務のコンピュータ技師、妻は5歳の一人娘を育てる平凡な主婦だった。この幸せな30代家庭に不穏な影が訪れ始めたのは、コンピュータ技師である夫が、友人ともに韓国ドラマをこっそりと見始めた時からだ。
北朝鮮では、2020年12月に反動思想文化排撃法を制定している。韓国ドラマや映画、音楽、図書、宗教関連の書籍や資本主義的なライフスタイルにまつわるコンテンツを見たら、少なくとも5年間、最大で15年間の労働懲役刑に処されるという法律である。この法律に、30代の夫が違反したのだ。このまま一緒に暮らしていれば、妻と娘も平壌で暮らすことができなくなる。
初めは夫も、妻と娘のために自ら離婚申請しようとしていた。ところが、妻が先に離婚申請を出し、離婚理由として過去の夫との生活態度までを暴露したことで翻意する。妻と娘の立場を思いやる気持ちよりも悔しさが募り、その悔しさは徐々に怒りに変わっていった。