人口ボーナスの終焉
しかし、ほんの数年前には、多くの中国人学者と国連は中国の人口が2030年前後にピークに達すると見ていた。
予想よりはるかに早く転換点に達したことに、中国の指導者は粛然とするはずだ。
人口減少は、中国がもはや、膨大な量の安価な労働力が成長を押し上げる人口ボーナスを享受できないことを改めて思い出させる出来事だ。
(中国の統計局は昨年の成長率が3%だったとしており、毛沢東時代の終焉以来、突出して低い水準になった)
そして今、中国は急激に高齢化している。
生産年齢人口は2012年に減少に転じた。最初に豊かになることもなく、また膨れ上がっていく高齢者層が必要とする医療その他のケアに十分なお金をつぎ込むこともないままで、日本や韓国といった国がたどった道のりを追いかけている。
中国政府は必死になってこれを是正しようとしたが、手遅れだった。
数十年来の一人っ子政策をあきらめたのは、2016年になってからだ。
2021年には、夫婦に3人の子供を持たせる政策に切り替えた。これは制限というよりは、むしろ願望で、それ以上の子供をもうけても罰則はない。
この政策緩和は現金支給から税制優遇、長い産休まで、子供を持つ様々な奨励策を伴って実施されたが、ほとんどインパクトがなかった。
出生率低下で国力に悪影響
直近の統計によると、2022年の出生数は956万人で、前年実績より10%近く少なかった。この出生数は1949年に中国共産党が政権を握って以来、最も低い数字だ。
今から10年前には、合計特殊出生率(現在の出生ペースで1人の女性が生涯に産む子供の数の平均値)は1.7人だった。
国連の数字によると、2021年には1.2人を割り込んだ(図1参照)。