(英エコノミスト誌 2023年1月7日号)

不動産バブルの崩壊は英国のミレニアル世代に大きなダメージを与える可能性がある(写真は英国の街角)

若さは若者に無駄にされる。だが、富は高齢者に無駄にされる。

 ミレニアル世代のなんと気の毒なことか。こめかみには白髪が交じり、頭頂部は薄くなり、胴回りは厚みを増している。

 かつては反抗的な若者を意味した言葉だったのに、今日ではますます老化の進むこの世代に首相までもが名を連ねている。

(英国の首相は1980年生まれで、文字入力には指を3本以上使用する)

 インスタグラムで不妊治療や遺言、バイアグラの広告に付きまとわれるのが典型的なミレニアル世代だ。

 経年劣化など大したことはないというのであれば、英国社会の不公正の数々が状況をさらに悪化させる。

 中年に片足を突っ込んでいるこの世代にとって、人生は非常に厳しいものになっている。

 人生の半ばは仕事に脂がのり、子供を育て、しばしば老親の介護も担うとされる年代だ。

 だが、ただでさえ住居費や子育ての負担が重いところに不公平な税制やバランスの悪い福祉国家がのしかかり、惨めな時期を送るフェーズでもある。

 これを暗黒時代と呼ぶといいだろう(ここで利害関係を告白しておく必要がある。筆者はこのミレニアル世代のど真ん中に位置している)。

共働きでも難しいマイホームの夢

 英国政治の問題のほとんどがそうであるように、この話もすべてが住宅からスタートする。

 住宅を初めて購入する人の平均年齢は32歳だ。最近購入した人は、恐らく人生で最も高い買い物をローンで買う賭けに出て、ババを引いてしまった恐れがある。

 もし住宅価格が下がれば、若い人たちは住宅を買いやすくなる。持ち家がある年長者は、ローンの返済が進んで純資産額が増えているから影響を受けない。

 見捨てられるのは暗黒時代に陥っている人々だ。

 住宅ローンの元利返済負担が急増する以前から、住宅は手が届きにくいものになっていた。