(英エコノミスト誌 2022年12月17日号)
今年は西側世界にとって良い年だった。
西側の同盟はロシアの攻撃に結束して対抗し、世界をあっと言わせた。
権威主義的な中国が毛沢東の時代以来最低の部類に入る経済成長率に甘んじる一方、米国経済は高成長を謳歌している。
英国が欧州連合(EU)離脱を決め、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に選出された2016年に始まった富める国々でのポピュリズム(大衆迎合主義)の大波は、ピークを越えたかに見える。
しかし世界の注目こそ浴びていないが、裕福な民主主義国はゆっくりと進行する深刻な問題に直面している。
弱々しい経済成長がそれだ。
豊かな国で滞る経済成長と生産性
新型コロナウイルスのパンデミックが始まる前の年に、先進国の国内総生産(GDP)成長率は2%に届かなかった。
短い間隔で公表される経済指標からは、富める国々の生産性(生活水準向上の究極の源泉となるもの)はせいぜい横ばいで、低下している恐れもあることがうかがえる。
政府の経済予想からは、富める国々の国民1人当たりGDP成長率ランキングで真ん中に位置する国の値が、2027年までに年1.5%を下回りそうなことが見て取れる。
カナダやスイスなど、0%近くにまで落ち込みそうな国もある。
ひょっとしたら弱い経済成長は富める国々の運命なのかもしれない。
まず、多くの国で人口が急速に高齢化している。ひとたび労働市場が女性に開かれ、大学教育が大衆化すれば、成長の重要な源泉は枯渇する。
適切な公衆衛生の実現、乗用車やインターネットといった科学技術の進歩がもたらす果実も、手の届きやすいものは大半がすでにもぎ取られた。
しかし、この経済成長の問題は克服できる。
政策立案者は、貿易を容易にしてグローバル化を加速させることができる。都市計画を改革して建物を建てられるようにし、法外に高い住居費を引き下げることもできる。
引退する高齢者に取って代わる移民を受け入れることもできる。これらの施策はすべて、経済成長率を引き上げる。