(英エコノミスト誌 2022年12月10日号)
短気な投資家と非公開市場での損失、そしてリターンの上昇にも備えよ。
チープマネー(低利資金)が終わりを迎えた。
株価はもっと大幅な下落に見舞われたことがあるが、これほど多くの資産市場が同時にこれほどの惨事に見舞われたことはめったにない。
投資家はいつの間にか新しい世界に入り込み、新しい法則を必要としている。
痛みはかなり激しかった。
米国の主要企業で構成されるS&P500種株価指数は今年、最も安い局面までの下落率がほぼ25%に達し、10兆ドルを超える時価総額が失われた。
また、通常は株式からの避難先となる国債も打撃を被り、今年は米国債にとって1949年以来最悪の年になろうとしている。
実際、米国株が6割、米国債が4割を占めるポートフォリオを想定した場合、今年の初めから10月半ばにかけて記録した下落率は1937年以降のどの年よりも大きかった計算になる。
一方、住宅価格はバンクーバーからシドニーに至るまで世界中で下落している。
暗号資産のビットコインは暴落した。金は輝かなかった。コモディティー(商品)市場だけは今年好調だったが、これは戦争のせいでもある。
突然のインフレが衝撃を増幅
ここまで大きなショックになったのは、投資家が低インフレに慣れきっていたためだ。
2007~09年の世界金融危機の後、各国の中央銀行は景気を回復させるべく政策金利を引き下げた。
金利が下がり、そのまま低水準で推移すると、資産価格が急騰し、「なんでも強気相場」が定着した。
S&P500種株価指数は2009年の安値から2021年の高値にかけて7倍に高騰した。
ベンチャーキャピタルはありとあらゆる種類のスタートアップ企業にますます大きな金額の小切手を手渡した。
プライベートエクイティ(PE=未公開株)に不動産、インフラ、プライベートレンディング(ノンバンクによる事業会社への融資)などを加えた非公開市場は世界中で拡大し、その規模は10兆ドルを突破した。