(英エコノミスト誌 2022年12月24日・31日合併号)
混乱をもたらす年もあれば、解決策を授けてくれる年もある。今年は「問い」を突き付けてきた。(文中敬称略)
世界が試された1年だった。
ウクライナ侵攻から中国の新型コロナウイルス感染症まで、インフレから気候変動まで、米中関係の緊張から極めて重要な選挙に至るまで、2022年という年は難しい問いを矢継ぎ早に繰り出してきた。
この試練は世界を新しい方向に送り出しただけでなく、その世界を新たな視点から見せてくれた。
ウクライナが思い出させた自由の価値
最大のサプライズ――そして最も歓迎すべきこと――は、おおむね自由主義の国々で構成される西側陣営の強さだった。
ウラジーミル・プーチンは2月24日にロシア軍にウクライナ侵攻を命じた時、汚職まみれの国の政府はすぐに屈すると踏んでいた。
2021年のアフガニスタンからの屈辱的な撤退の後、退廃的で分裂した西側は、ロシアを非難してもウクライナを本気で支援することはないと考えていた。
ところがウォロディミル・ゼレンスキーとウクライナ国民は、自国のことを自ら決める権利と自由は命を懸けて守るに値するものだと明言した。
この姿勢に人々は感銘を受けた。
自国民の間でウクライナ支持が盛り上がると、西側諸国は軒並み、民主主義の新しい闘士への支援を表明した。
米国のバイデン政権を先頭に、西側は大量の兵器と支援を、それこそタカ派でさえ想像しなかった大きな規模で提供している。
ポピュリストに背を向けた有権者
有権者は国内でも自らの意見を主張し、タブー破りを繰り返すポピュリスト(大衆迎合主義者)の敵に回った。
米国ではジョー・バイデンの支持率がひどく低迷していたにもかかわらず、中道派が基本的な権利を守るべく投票所に足を運んだ。
いくつかの州では、連邦最高裁判所が「ロー対ウェイド判決」を覆したことを背景に人工妊娠中絶の権利も脅かされていた。
激戦区ではドナルド・トランプの推薦を受けた筋金入りの選挙否定論者たちがほぼ全員敗北した。
フランスではマリーヌ・ルペンが極右の出自をごまかして選挙戦に臨んだが、それでも中道のエマニュエル・マクロンに敗れた。
イタリアではジョルジャ・メローニが第2次世界大戦後初の極右の首相になった後、中道寄りになった。
よろよろしている英国でさえ、労働党と与党・保守党の双方が、極右・極左のポピュリストとは離れたところに選挙の勝利があると計算している。