Aさん「私の多くの友人は、習近平の再任が確定する前後、一種の“政治欝”状態になり、気持ちがひどく落胆していました。習近平の続投もありますが、実は最も重要なのは、このコロナ禍の3年、中国人が、中国共産党の権力があらゆるところに及んでいると実感したことです。コロナ以前は、多くの人が中国共産党に対して、正直なところ『どうでもいい』といった態度でした。なぜなら政府が一人ひとりの生活に干渉することはなかったからです。しかし、コロナ禍の3年は完全に異なります。中国共産党は一人ひとりの頭上にいて個人の運命を決定することができる、ということを誰もが思い知ったと言えるでしょう」
楽観的になれない中国の民主化
──しかし、依然として多くの人が中国共産党を支持していますよね?
Aさん「はい。人それぞれ考えは異なります。例えば、教養のある友人は、『習近平の続投は明らかに時代に逆らっている。共産党の自滅を加速させているだけだ。まあ、これは良いことだけどね』と言い、公務員や国営企業の職員は「習近平が続投しても自分への影響は限られている」と言います。
しかし、私は商売をしているので、ここ数年は非常に苦しいです。コロナ前は経営はうまくいっていたのですが、この数年で希望は消え失せた感覚です。とても明日への希望が持てません。もし、習近平が「中国の目標は北朝鮮のようになることだ」と言うなら、それはそれで良いでしょう。それならば私はすぐに移民になることを決心し、中国を離れます。中国を離れるのは、おそらく私だけではないでしょう。問題は、中国が今後どのように変化するか、私たちには分からないことです」
──中国は民主化すると思いますか?
Aさん「楽観的には見ていません。なぜなら、頭の中がはっきりしている人がまだ少なすぎます。実際のところ中国では、白紙運動について知らない人や、気に留めない人の方が断然多いのです。地元の同級生の約8割が、望平路で何が起きたか知らないと思います。それから、あなたは『民主』と言いますが、見たこともないものを人はどうやって追求するのでしょう? 中国共産党体制下で民主を求めることは非常に難しいと思います」
中国のネット検閲を突破した「翻墻者」
白紙運動自体はすでに収束してしまったが、一つ非常に重要なことが浮き彫りになった。中国のネット検閲をかいくぐる手段である「翻墻(ファンチャン)」(いわゆるVPN)についてだ。