中国・香港の香港大学で行われたウルムチの火災犠牲者の追悼式で、中国本土のゼロコロナ政策に抗議して白紙を手にする人々(資料写真、2022年11月29日、写真:ロイター/アフロ)

(馬 克我:日本在住中国人ライター)

 中国における白紙運動はすぐさま収束したようであるが、人の心は、掲げていた白い紙を下ろしても簡単に変わるものではない。白紙運動は、天安門事件以来、唯一、中国全土で政治的スローガンが叫ばれる抗議運動となった。

 中国人は一体どのように白紙運動に参加し、この抗議運動をどう見たのか。白紙運動で浮き彫りになった注目すべき点とは。昨年(2022年)11月27日に成都で起きた白紙運動に参加した友人の中国人(以下、Aさん)にインタビューを行った。Aさんは30代後半の男性で成都出身、既婚者であり中小企業経営者である。

若者が空高く放った「白い紙」

──成都で白紙運動があった当日の状況を教えていただけますか。

Aさん「11月27日午後、『微信(WeChat)』のモーメンツ(LINEのタイムラインのようなもの)に、19時に望平路で抗議運動があると多くの人が投稿していました。そこで、私は友人と午後に行ってみました。望平路は歩行者天国で、着くと20代くらいの若者たちが十数人でダンスを踊っていました。19時を過ぎると、人々が続々と集まってきました。おそらく400~500人はいたと思います。すると、ダンスをしていた若者の一人が突然大量の白い紙を空高く放ちました。皆がその白い紙を拾い、各々に掲げ、抗議運動が始まりました」

──多くの人が目にする「微信(WeChat)」のモーメンツで抗議運動が呼びかけられたということは、政府も当然それを把握していたと思いますが、警察が集会を妨げることはなかったのですか?