加藤一二三(2018年撮影) 写真:つのだよしお/アフロ

(田丸 昇:棋士)

2022年度の「文化功労者」に選出

 文化の発展に功績が顕著な人に贈られる2022年度の「文化功労者」に、将棋棋士の加藤一二三・九段が選出された。62年にわたる長い現役生活と、2017年に引退後もタレント活動を行って将棋の知名度の向上に尽くしたことが顕彰された。将棋界では、1990年の大山康晴十五世名人に次いで2人目となる。

 11月4日に都内ホテルで顕彰式が開かれた。加藤九段は、文化功労者(計20人)に選ばれたシンガーソングライターの松任谷由実さんらと出席した。

 加藤は記者陣に「今後も健康に留意して、これまでどおり良い仕事をしていきたいと決意しております」と語った。

「ひふみん」の愛称で親しまれる

 加藤九段は「ひふみん」の愛称で親しまれている。テレビのバラエティ番組に出演したときは、ひょうきんな様子を見せた。趣味はクラシック音楽で、猫好きとして知られている。高齢でも食欲が旺盛で「うな重」が好物だという。

 近年はそうした盤外のことが注目されている。しかし、現役時代は「神武以来の天才」と呼ばれ、タイトル戦で活躍した超一流棋士だった。加藤の生い立ちと、悲願の名人位を42歳で獲得するまでの軌跡をたどってみる。