インタビューを終えて3人で食事に行くことになった。その特派員の選んだ店が、ジョークにも程があるというものだが、ステーキの店だった。
佐川氏が油でぎらつく唇を舐めながら、特派員の顔をじっと見つめていたのは言うまでもない。
怖いもの見たさで取材に来た女性特派員が大満足で帰ったのも、もちろんのことだ。
狂おしいほどのサービス精神
さらにそれから10年後、今度は雑誌の企画で再び佐川氏を取材した。
待ち合わせの新宿駅東口に現れた彼は饒舌だった。
「今日はどうも。10年前の取材を覚えていますか?」
「ハイ‼ 覚えていますよ」
と、やや皺枯れた声の答。
おそらくリップサービスだろうが、彼のサービス精神を垣間見たように思った。
あれから彼は、数冊の本を出し、さらにアダルトビデオにも出演していた。
ビデオの中で彼は病的なまでのマゾヒストを演じていたが、それも彼の狂おしいほどのサービス精神の表れかもしれない。
この日も彼は、
「今日はどんな感じで撮ります? ショーウインドウのマネキンを見つめるなんてどうでしょうね」
と、新宿の人通りの真ん中に立ったり、壁の後ろからチラリとこちらを見たり、自ら率先してポーズをとった。