「活断層防災、第2フェーズに」
それでもまだまだ、と思い知らされたのが、2016年4月の熊本地震だ。阿蘇外輪山の西側斜面から熊本市の方向へ南西に伸びる布田川断層が動き、住宅8642棟が全壊し、273人が亡くなった。
この地震で、事前のリスク予測や、防災につなげる仕組みについて、いくつかの課題が浮き彫りになったと鈴木康弘・名古屋大教授は指摘している*7。
その一つが、活断層沿いの「震災の帯」にかかわる問題だ。熊本地震では、震度7を記録した益城町で、活断層に沿って建築物の被害が集中した(図3)*8。
阪神・淡路大震災でも震災の帯が生じたが、その後の震災対策としては「日本中どこでも大きな地震に備える」のが基本方針だった。しかし実際に震度6強や震度7に襲われるのは、断層に沿った場所や地盤条件の悪い場所に限られる。
そんな「将来の震災の帯」になる危険性のある区域をあらかじめ洗い出して対策を施し、悲劇が繰り返さないように、「そろそろ次のステップ、活断層防災の第2フェーズを意識すべきだ」と鈴木教授は述べている。
すでに水害や土砂災害は、法律でリスクの高い地域を指定して、開発・建築を制限したり、他の場所より構造の強化を求めたりするようになってきている*9。同じような考え方を活断層でも取り入れようと、徳島県など一部の自治体では条例化などの動きが始まっている*10。
活断層で死ぬ人を減らすために、そういったきめ細かな対策を、もっと広げる必要がありそうだ。
*7 鈴木康弘・竹内裕希子・奈良由美子編著「熊本地震の真実―語られない『8つの誤解』」2022年8月 明石書店
*8 国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書」2016年9月(https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000633.html)
*9 水害では、2021年の法改正で、浸水リスクの高い場所を都道府県知事が「浸水被害防止区域」に指定し、住宅などの建築に制限できるようにしている。(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001442949.pdf)
土砂災害では、「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」が指定され、レッドゾーンでは建築物の構造が規制される。(https://www.mlit.go.jp/river/sabo/tokushu_dosha/tokushu_dosha1_sanko2.pdf)
*10 徳島県 特定活断層調査区域の指定について(https://anshin.pref.tokushima.jp/docs/2013082700025/)