「ものづくり日本」は瀕死の重体
21世紀に入って世界を席巻したGAFA、成長の起点はすべて情報産業、情報科学にありました。
さて先日、日本屈指の半導体モノづくり力を誇る 東北大学電気通信研究所で学会の折、歴史と伝統を誇る東北大の泰斗、某先生から悲しいお話を聞き、我が耳を疑いました。
「もう学部でアナログを教えなくなっちゃったから、どこもかしこもデータサイエンス一色で、日本のモノづくりもこれでは終わりですよ・・・」
アナログ回路を教えなかったらハードウエアは設計できません。そもそもアナログは電磁気学の領分、物理原則から計算原理を構築する1の1です。
その基礎を教えなくなってしまったら、モノづくりは根絶やしになるしかない。
私ももとは物性物理を学び、第一原理からモノを作る大切さはよく心得ています。しかし、いま日本では、独力でICチップを設計できる若者が数えられるくらいしかいなくなってしまった・・・らしい。
そういう人たちは「人間国宝」に指定して、手厚く保護育成する必要があるように思うのは私だけでしょうか。
あるいは、かつて1980年代の日本には坂村健氏の「TRON」のように純国産OSを確立する能力がありました。
私が物理の学生だった時代、物理から分かれてできた情報科学科に外様の若手教員として入ってきた坂村氏は、学内からも集中砲火的なイジメに遭い、米国からもすさまじい圧迫と攻撃で、純国産OSは満身創痍、内憂外患の渦中にありました。
やがて1990年代末、坂村氏を教授、私を助教授として大学院情報学環「情報とシステム」学域というものが創設されました。
しかし、結局定年まで彼はヒラのまま。安倍晋三政権で特区に紛れ込んで東洋大でどうにか成仏できたものの、日本国内では、女性よりよほど恐ろしい男の嫉妬怨嗟による嫌がらせや足引っ張りに終始。
その坂村研の後裔も、基本は「データサイエンス」側にシフトして、いま現在自前のOSやシステム開発が進んでいるという話は聞きません。
他方、日本全体は外圧や外資にはからきし弱く、アマゾンでもウーバーでも舶来大手にはすぐ恭順の意を示してしまいます。
でも考えてみてください。
日本国内で部品製造に人件費がかかるというとき、コストカットで東南アジアの下請けを使ったとしましょう。
現地での就労環境や福利厚生をどの程度考えるでしょう?
一部現地人経営者がしっかり抑えてくれればそれで十分、あくまで目的は利潤最大化ではないでしょうか?
同じことをいま日本は、GAFA大手に好き放題やられている。