東京大学は女性に人気がないだけのこと・・・

 敬愛する先輩の若林秀樹さん(東京理科大学MOT主任教授)から、前回稿へのお励ましの私信とともに「女子学生比率」、とりわけ東京大学の話題を振っていただきました。

 当該案件については長年思うことがあり、今回はこれを取り上げてみたいと思います。

 社会では、何の責任も持たない人が「東大はなぜ『女子2割』の壁を超えられない」(https://dot.asahi.com/dot/2022042800013.html?page=1)などと興味本位な見出しを立て、「男性中心の東大が社会の偏りを生む」などと、読者が溜飲を下げそうな記事を出稿しています。

 しかし、当事者の観点から言わせてもらえれば冗談ではないというのが正直なところです。

 今回は「東大女子2割の壁」なるものが、高々大学の自助動力程度でどうにかなるような代物ではないことを具体的に説明しましょう。

 本当に日本を変えていきたいのなら、抜本的な雇用体制からの変革がなければ不可能です。

 なお、念のために書き添えますが、東京大学伊東研究室は女子学生率100%、男は私しかいないラボラトリーで、それなりに高い生産性を保っています。

 私見では、しっかりしているのは留学生女子、一番だらしないのが日本人の男子というのが東大生活40年になる私の実感するところです。

「店が力めば顧客が増える」なら苦労しない

 そもそもこの種の議論の困った点は、大学そのものの「不人気」がどこかに棚上げになっていることにあります。

 きちんとデータを積み上げて示してみましょう。

 まず日本人の男女比、出生時にはほぼ五分五分で(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai08/sankou3.html)、歳を経るにつれ女性の方が寿命が長いですから、男性が劣勢になっていく。

 次に大学進学率。平成28年内閣府のデータ(https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/honpen/b1_s05_01.html#:~:text=%E5%A4%A7%E5%AD%A6%EF%BC%88%E5%AD%A6%E9%83%A8%EF%BC%89%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%80%B2%E5%AD%A6,%E3%81%AF57.1%EF%BC%85%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%80%82)では、男子進学率55.6%に対し女子進学率48.2%。

 これに女子の短大進学率8.9%を加えれば女子全体の「大学等進学率」は57.1%となって男子を抜き、決して女子の教育リテラシーが不当に低く抑えられていないのがはっきり分かります。

 では問題の「東京大学」についてはどうなのか?