集団圧死事故が発生したソウルの繁華街(10月30日、写真:ロイター/アフロ)

 10月29日午後10時頃、ハロウィンで賑わっていた韓国ソウルの主要繁華街の一つ「梨泰院(イテウォン)」で「群衆雪崩」事故が発生。

 日本人も10代と20代の女性2人が亡くなったと報じられています。

 現場はイテウォン駅前「ハミルトンホテル」の側壁に面した幅4メートル、長さ50メートルほどの緩やかな坂道。この「坂」や「谷」は今回のキーワードですので、最初に指摘しておきます。

 日本でも「道玄坂」とか「スペイン坂」あるいは「渋谷」といった地名の人が集まる繁華街の地名が思い浮かびます。

 現在までに確認されている死者数は153人と大惨事となりました。

 報道によれば、事故のきっかけは「繁華街の飲食店に芸能人、著名人だかがいる」という情報で、スマートフォンを手にした大群衆が、元来その人数を収容できるわけのない面積に殺到、その過程で将棋倒しが起こり、150人以上の犠牲者が出てしまった様子です。

 犠牲者の大半は20代の女性と伝えられます。死者151人の段階での犠牲者男女比は、男性54人に対して女性97人、ほぼ2倍の人数です。

 この男女比を見た瞬間、2001年に兵庫県の明石で発生した花火大会での歩道橋群衆雪崩事故を想起しました。

 こうした事故では「弱い存在」に犠牲が集中しやすい。

 いまだ事故収拾が進んでいる状況ですが、再発防止に向けてのポイントを考えてみたいと思います。

明石歩道橋事故から見た「梨泰院群衆雪崩」

 2001年7月の明石歩道橋群衆雪崩事故では、合計183人が重軽傷を負い、11人の犠牲者が出る大惨事となりました。

 この先行事例から見ても、今回の梨泰院事故は犠牲者だけでも10倍以上の規模に上っており、只事ではないのが察せられます。

 明石の事故では、11人の犠牲者全員が「急性呼吸ひっ迫症候群」つまり莫大な人の波に押されて息ができない、呼吸不可能な状態に置かれて「圧死」という、あってはならない事態が起きてしまった。

 窒息、恐ろしい状態です。

 一般的にヒトは3分呼吸ができないと生命に危機的な状態に陥り、10分経過すると生存率50%、15分が経過するとほぼ100%、絶望的な状態に陥ると考えられています。

 明石の事故では11人のうち9人が子供、2人が高齢者、と「弱い存在」に被害が集中しました。身長が低いと人波の中で埋もれてしまいやすい。