ちょっとしたクラッシックの演奏には総額で高級外車100台分ほどの楽器が集まっている

 ゴッホ「ひまわり」に「トマトスープ」の次は、オーケストラに「スプリンクラー」で豪雨か滝のような大量の水が降り注ぎ(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221019/k10013863821000.html)、数億円の被害が出ているなか、責任がうやむやにされそうになっているという報道。

 この事態は重く見る必要があり、詳細に解説します。

 世間は「楽器」を道楽の道具と甘く考えがちですが、プロ奏者にとっては、ライバルに伍して生涯の生活を支える生計の資です。

「題名のない音楽会」監督時代の私が電通その他、認識の低い連中に説明する際には、「外車1台、家1軒」と見積もりを示したものです。

「裾野市」で発生している事態を見てみましょう。

舞台上が突然「滝」に

 9月24日、裾野市の「裾野市市民文化センター」(https://www.susono-bunka.jp/)では、市民向けの行事として「オーケストラを聴こう! ブラームスシンフォニーとジョン・ウイリアムズ映画音楽の世界」という一般向けの公演が予定され、当日直前のリハーサル、我々の業界では「ゲネプロ」と称する一種の通し稽古が行われていたようです。

 ですが、結果的にこの公演は行われず、チケットの払い戻し(https://www.susono-bunka.jp/topics/post209857/)告知が行われています。

 なぜ演奏会が行われなかったか?

 リハーサルの最中に防火用のスプリンクラーが作動し始め、楽員も楽器も舞台も会場も水浸しとなってしまったというのです。

 上にリンクしたNHKの報道は「市の所有する音響や照明機器など1億5000万円あまりの被害」という、まあ大したことのない被害の方を報じ、怪我人の有無やオーケストラ側の被害は「把握できていない」としています。

 またスプリンクラ―は「舞台脇の2か所にあるレバー」を「手動で操作して作動させる仕組み」であり、1991年の開館以来、31年間散水にまつわる事故や被害は出ていない、という。

 点検整備の結果、システムに異常はなく、裾野市には管理責任はない、何者かによる人為的な操作、事件の可能性を視野に「警察と相談」。

 むしろ市は被害者とでも言わんばかりの論調に、演奏していた「シンフォニエッタ静岡」側が「泣き寝入りさせられるのではないか?」と危惧の念を抱いて、被害状況の公開に踏み切った、という流れと報じられます。

 こうした事態に音楽家は一般に不慣れで、プロモーターや主催者のいいようにやられてしまうことが少なくとも20世紀末年は非常に多かった。