就活の問題をもっと深刻に考える必要がある

 関西の大手企業社員である28歳の男性が、企業が採用のためインターネット上で実施している「適性診断テスト」に、謝礼を受け取って替え玉受験していたとして逮捕されました。

 逮捕されたのは大阪市の会社員、田中信人容疑者という若者で、彼は京都大学の大学院を修了し、西日本を代表する大企業の専従社員として安定した生活を送っているはずの28歳です。

(大半のメディアで大学院を卒業と記していますが、単に間違いで、いったい報道機関のチェック機構はどうなってしまったのか、そちらの方も心配になりました)

 警察の取り調べによると、田中容疑者は就職活動中の20代の女子大学生から依頼を受けて、彼女がエントリーしている企業が人事採用に際して用いている「適性診断テスト」の入室IDとパスワードを受け取り、ネット上でログイン、本人に替わって受験したとされています。

 依頼した女子大学生も警察の捜査対象となっており、11月22日に書類送検されているとのこと。「自分の力では受からなかったので、田中容疑者に20社ほどの(すごい数です)企業テストの代理受験を頼んだ」と供述しているようです。

 田中容疑者は、この女子大学生だけでも「1科目あたり2000円、合計10万円以上」の報酬を受け取っており、同様の手口で合計300件ほど、総額400万円以上を稼いでいたと報じられました。

 この替え玉受験で、実際一部の会社についてはテストを通過したそうです。ただ、最終的には内定前にすべて辞退。

 就職はできないわ、お金は無駄になるわ、警察には捕まるわで、ろくなことがなかったことになります。

 この問題、当然ながら田中容疑者への非難をメディアでは目にし、私もこうした犯罪を庇う気は一切ありません。

「偽計業務妨害」「私文書偽造」など、様々な罪名のつく、れっきとした不法行為であり、応分の処罰を受けるべきでしょう。職も失うようなら、若いみそらで愚かなことをしたものです。

 ただネットでは「京大で院まで出ておきながら、京都大学はそういう倫理は一切教えないのか!」みたいなピント外れな書き込みも目にしました。

 京都大学の事情は知りませんが、それは当たり前で、大学院生として採用した若者に「人のものは取ってはいけません」「ウソをついてはいけません」などと幼稚園児みたいな指導をする局面は基本、存在するわけがない。

 昨今の大学院は極力、学生のプライバシーには触れないのが大原則というのも、付記しておきましょう。