11月14日、インドネシアで首脳会談を行った習近平主席とバイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 米中の冷戦について、11月19日付の日本経済新聞のオピニオン欄に気になる記載を見つけた。14日にバイデン大統領が習近平国家主席と就任後初となる対面での会談を行ったばかりだが、バイデン政権は、中国が米国の影響力を落とし米国に代わる最強国になるつもりだと警戒している一方で、習政権は、米国の目標が共産党政権の弱体化にあると信じ込んでいるようだ、としてこう書いている。

「米国は04年、親ロシア政権が転覆されたウクライナのオレンジ革命を支持した。同じように香港や台湾に介入し、中国の共産党体制を弱めようとしている――。米情報関係者によると、習近平氏は近年、このような趣旨の不満を米側に重ねて漏らした」

 これを見て興味深いのは、少なくとも同紙が新「悪の枢軸」と呼ぶ、中国、ロシア、北朝鮮が国際法を犯して世界を混乱させるのは、少なくとも現体制を維持したいそれぞれの国の指導者が、いわゆる西側諸国のこれまでのやり方に、我々の想像以上の恐怖と警戒心を抱いていることが知れるからだ。

ウクライナの親ロシア派政権崩壊で危機感覚えたプーチン

 オレンジ革命とは、2004年の大統領選挙で親ロシア派のヤヌコービッチと親欧米派のユシチェンコの一騎打ちとなり、結果はヤヌコービッチが勝利。ところが、この結果にユシチェンコ陣営は選挙に不正があったとして首都キーウで大規模な抗議活動を連日開催。ユシチェンコは選挙中に重病に陥り、美男子とされていた顔が急激に変貌したことで、ロシアのスパイにダイオキシンを飲まされたとの報道もあったことから、欧米をはじめ世界的な世論もユシチェンコ側に傾いた。ここに米国とEU(欧州連合)などの仲介もあって再投票が行われた結果、ユシチェンコが大統領に就任した。米国の介入があったとする見方もある。オレンジはユシチェンコ陣営のシンボルカラーだった。

 ただ、このユシチェンコ政権も発足直後から政権内部の対立が顕著化し、支持率も落ち込んでいく一方だった。そこに一枚岩になれないウクライナの国情もあるのだが、結局、2010年の大統領選挙では親ロシア派のヤヌコービッチが当選している。