招致の際の予算額は、そもそも過少な見積もりだったのだろう。経費の拡大に対する国民の批判が強かったからだ。いずれにしても巨額の公的資金が投入されるのがオリンピック・パラリンピックなのだ。

 だが開催経費以外にも、新国立競技場の建設など関連経費が膨大なものになり、ここに巨額の公費が投入されているのだ。2019年11月4日、会計検査院が公表した数字では、2018年度までの6年間に国が支出した関連経費の総額は約1兆600億円、大会組織委員会と東京都が見込む事業費と合わせると、関連経費の総額は3兆円を超えることが明らかにされている。

 しかも問題なのは、新増設された競技会場のその後の利用方法が不透明なことだ。政府は、維持管理費を抑えるため国立競技場を民営化する方針だが、進んでいない、

 東京都が約1300億円かけて整備した「海の森水上競技場」や「東京アクアティクスセンター」などの6施設も、一般の利用で黒字が見込まれるのは、コンサート需要もある有明アリーナだけだという。6施設のうち5施設は赤字が見込まれ、その額が年間で約11億円の見込みだと言われている。東京五輪が終わっても、その後始末に公金が投入されるのだ。

 東京五輪の競技に多くの国民は感動した。懸命に頑張る選手の健闘は素晴らしいものがあった。だが、だからといって「良かった、良かった」で終わらせてはならない。ここまで巨額の資金を投入していいのか。そもそもオリンピック・パラリンピックへのチェックシステムが何もない。組織委員会、東京都、国が緊密に協議・連携しているとは到底思えなかった。それぞれが勝手に動いているように私には見えた。

 東京五輪組織委員会はすでに解散した。重要な大会文書は法令に基づき、10年間保存されるが、会計帳簿や契約書は原則として一般公開しないという。これでは会計を検査できず、闇の中ということになる。何千億円、兆単位の金を扱う組織委員会がこれで良いわけがない。抜本的なメスを入れるべきである。